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2009年7月

“きみはペリー提督のフルネームを知っているか?” 横浜開港150年ビデオクリップ

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―――― 恥ずかしながら僕は今回の映像作品製作によって、初めて彼の名前を知ることになった。

アメリカ海軍 東インド艦隊司令長官 兼 遣日大使
マシュー・カルブレース・ペリー


今から150余年前、黒船の艦隊を率いて日本に来航し、幕府に開国を迫った男だ。


「“横浜人形の家”で横浜開港150年にちなんだ作品展示を開催することになったんですが、TACさんも映像でコラボしませんか」

……と、横浜在住の造型名人Sさんからお話しをいただいたのは4月の半ば頃だった。

http://yokohama-doll.museum.or.jp/plan/

主としてフィギュア等の造型を手掛けておられる皆様が、横浜開港の歴史にちなんだ力作をご披露される展示イベントになったとのことで、そこに映像をからめるというのがユニークに思え、快諾させていただいた。

久しぶりに自主製作の映像作品を一般の皆様にご覧頂ける機会である。

とはいえ、歴史をテーマとしたイベントの展示映像で使うということで、普通のインディーズムービーとはいささか異なったテイスト、そしてスタンスでの作品製作であり、こういう挑戦も面白いと思った。

普段仕事で手掛けているVPやドキュメントのノウハウが生かせるというのも面白い。

―――― どんなものを作ろうか? と、かなり迷ったが、最終的には「正攻法」でいくことにした。

やはりこういったイベントでは、眼前に展示されている見事な造形物のインパクトがイベントの魅力そのものなわけだから、映像はそんな皆さんの作品の「応援団」として、あまり前に出ることなく会場を賑やかにする役割を担えれば良いと思った。

また、技巧に走って「飛び跳ねる」ことなく、横浜開港150年という重みのあるテーマに則して、落ち着いたテイストの歴史ドキュメント・ビデオクリップにしてみようと考えた。

タイトルは「歴史の波頭」とした。

歴史は連続している。
どのような歴史的事件にも、それに至るまでの原因と過程があり、結果がまた別の事象の原因となっていく。
分断されることはない。

ペリー来航に端を発した日本の開国は、その後の維新、そして第一次、第二次世界大戦とも深く関わり、戦後の日米関係の奥底にもその影響が見て取れる。

歴史というものは、まるで大海原を覆い次々と押し寄せる波頭のように、途切れてはいないのだ。

今、我々が生活しているこの生活と150年前のペリーという男の来航も、実は切り離して考えることはできない。

それが良いことであろうと、悪いことであろうと。

ときには歴史の流れにも、思いを馳せて欲しい。

……そんな思いを込めている。

Yokohama150b

また、学校の授業などでは「ペリーが来航して開国の要求をした」……と、端的に説明されることが多いが、この男が日本にやってきた背景には、海外列強国の産業革命による燃料……鯨油の重要性の高まりとそれにともなう捕鯨船団の活動範囲拡大、遭難した船員と日本人との接触により生まれた誤解、曲解など、様々なファクターが存在した。

彼は、ただ「鎖国をやめろと言いに来た」だけではないのである。

そして、この異国の人々との折衝にあたった当時の日本人の、まさに血のにじむような努力があってこその開国だったということも忘れてはならない。

この作品は上映時間たった7分程度の「気楽に楽しんでいただけるショートプログラム」だ。
それにしては大仰なことを言いやがると思われそうだが、尺の長短に関わりなく、つくった作品にテーマを内包させるのは映像製作者としての責務だと思っている。

だから、短い映像の中にこんな「思い」を込めさせていただいた。

……主な被写体は3つ。

ひとつは「現在の横浜の様々な風景」
これはロケーション撮影を行う。

ふたつめは「現在の横浜と対比するための歴史的情景」
これは各種の歴史資料から当時の写真や絵画を引用することにした。

3つめは、今回の展示イベントの目玉でもあり、またこの作品のメインイベントともなるSさん作「ペリーの横浜上陸を再現した大ジオラマ」だ。

Yokohama150d

Yokohama150e

全長3メートル(2畳)にも及ぶ大面積かつ高密度な歴史再現ジオラマで、撮影の面から言えばベースが分割してあるのでかなり自由なキャメラポジションが選べた。

この見事なジオラマ作品がなければ、当方の映像作品も成立しなかった。

これに加えて、大海原を進むペリー艦隊などのショットを簡単な特撮で再現してみた。

今ではこういった描写はテレビ番組などでもCGに頼りがちだし、デジタルテイストの絵柄は誰もが見慣れていると思い、敢えて作り物の撮影で勝負してみた。

Yokohama150c

純然たる特撮用ミニチュアではなく、展示用精密模型と市販のミニチュアモデルを使った撮影なので、被写体そのものに動きの要素はないが、キャメラワークと音響効果で「動き」と「重量感」を再現してみた。

それぞれ短いショットだが、「意外にもこういう特撮的な映像が見られてチョット得した気分だね」といった掘り出し物的な感触を楽しんでいただければと思う。



―――― 実際の撮影は悪天候に泣かされ、横浜市内ロケは2度撮り直した。

映像製作にはつきもののことだが、実際には使用した映像以外に数カ所をロケしており、収録映像総尺は2時間に及ぶ。
そこから抽出して7分ほどにまとめたのだが、例えばわざわざ足を運んだ横須賀のペリー公園で撮った絵などは、よく撮れてはいたものの、それを使うとあまりにもペリーの存在にウェイトを置いた作品内容になる恐れがあると判断して全てカットした。

嬉しい出来事もあり、現在は「黒船」の仕様に復元された古い帆走外輪船が港に係留されていて見学もできるので、そこで撮影したショットが特撮とからめて効果的に使用できた。

結果的に、あまりシャッチコ張って見るお勉強ビデオ的なものではなく、短い時間ながらもフワッと休憩しながら気楽に見て頂け、ちょっとだけメッセージが伝わるようなビデオクリップにはなったのではないかと思う。



……7月24日金曜日、再生用モニタとデッキ、そして作品のDVDの会場搬入にお邪魔したが、会場内にはSさんの巨大ジオラマをはじめとした見事な造形作品、写真作品が綺麗に展示されていた。

その後、会場を訪れたお友達が「お年寄りの個人客や団体のお客さんが、皆さんこぞって座って楽しんでましたよ」と、様子を教えてくださった。

やれやれ……と、一安心である。

2009年だけ、横浜で開催されるイベント。

ぜひこの夏休みにでも、お立ち寄り頂ければと思う。

※昨年のイベント公開期間を過ぎましたので、当ブログ「ムービーギャラリー」にて作品展示中です。どうぞご笑覧ください。

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